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はじめに 「カノジョ? とくに要らないかな」 「カレシといるより、ひとりのほうが気楽なんですよね」 「えっ‥」と耳を疑った。
声の主は、おもに20代の男女。
08年11月、20代男性の恋愛意識と消費行動を綴った『草食系男子「お嬢マン」が日本を変える』(講談社)という本を書いて以来、彼ら若者には驚かされることばかり。
彼らの決まり文句は、「恋愛より楽しいことがある」だ。
最近まで、現″アラフォー(アラウンド40。40歳前後)″の私はこう考えていた。
「まだ若いのに、なぜ恋愛にこうも消極的なの? どっかおかしいんじゃない?」 こうも思った。
「彼らはまるで、恋愛を忘れた″ゼロ恋愛族″だな」と。
私は、いわゆる″バブル世代″だ。
大学時代(80年代後半〜90年代前半)の流行語は「アッシー、メッシー、ミツグくん」。
学歴や年収が高い男性と恋愛をして、足代わりに送り迎えしてもらったり、ご飯を奢ってもらったり、高級ブランドをプレゼントしてもらえるのがイイ女、とのニュアンスが世に蔓延していた。
多くの物事が″恋愛″を軸に回転していた。
でも、いまの若者は違う。
「恋愛? そんなの、結婚してから育めばいいですよ」 「運命の出会いなんて、どうせ待っていても訪れない。だったら毎晩寝る前にネットでコンカツしたほうが、出会いの確率が高いでしょ」 ″コンカツ(婚活)″とは、「現代は就活(就職活動)と同様、結婚に向けた活動(婚活)が必要な時代だ」との考え方。
社会学者でC央大学文学部のY田昌弘教授が著書『「婚活」時代』(ディスカヴァー・トゥエンティワン。
ジャーナリストのS河桃子氏と共著)で唱えた言葉だ。
08年には、新語・R行語大賞にノミネート、09年4月からは、同じテーマのドラマも放映された(NHK総合/Fジテレビ系)。
この影響で、「ネットで手軽に、婚活しよう」「大恋愛を待つより、お見合いパーティで″条件重視″の出会いを果たそう」と考える男女も出始めた。
そう、いまや目立った″恋愛力″がなくても、条件を満たせば結婚できる時代。
結婚しても男女共働きが前提だから、デートの段階から「男が女に奢るべき」との気負いは要らない。
だから20代男性はこう言う。
「クルマ? 別に興味ないですね」 デートだって、(クルマなんて)レンタルで十分ですよ」 恋人がいても、20代にとってクルマはデートの必需品ではない。
そもそも恋人がいる若者の割合が、驚くほど少ない。
とくに男子。
20歳(新成人)で恋人がいる男性はたったの2割、つまり8割は恋人ナシだ。
90年代半ばの新成人に比べて、3割も少ない。
うち3割が「交際相手は要らない」とハッキリ言い切る(08年 Oーネット「第13回新成人意識調査」)。
女性もそうだ。
同調査で「交際相手がいる」20歳女性は、3割強。
やはり90年代半ばに比べて2割近く少ない。
″恋愛クール″な20代女性にも、本当によく出会う。
ただし深く取材すると、彼らは決して″ゼロラブ族″ではない。
ただ、異性とあまり深い関係になりたがらない、恋愛にハマって前後不覚になったり、傷つけ合って結婚まで至らない恋愛を″パワーの無駄遣い″と考えるだけなのだ。
たとえるなら、″エコ恋愛族″。
買い物や日常生活で″エコ″を重視するいまどきの男女は、恋愛にもエコを求める。
無駄な告白はしない、余分なパワーは消費しない、交際してもどっぷりとはハマらない、むやみにセックスはしない。
昭和20〜30年代に一世を風廃した『君の名は』のような大恋愛や、バブル期に高視聴率を記録した『金妻(金曜日の妻たちへ)』のような不倫は、「ドラマや映画ならいいけど、現実には面倒で疲れるだけ」だと分かっている。
だから、バブル期のように「クリスマスは、半年前からカノジヨのために高級ホテルを予約するものだ」とは考えない。
無理してローンを組んで、1台100万円以上のデート専用車(クルマ)を買うのも「意味がないこと」と捉えるわけだ。
「でも恋愛への興味が薄れると、未婚化や少子化に拍車がかかるんじゃない?」 確かに一理ある。
男女が恋愛にハマらなければ、結婚にも子作り(妊娠・出産)にも至りにくい、常識的な見解だ。
しかし、本当のところそうだろうか。
改めてそう感じたのは、09年1月17日放映の『情報7daysニュースキャスター』(TBs系)を見たとき。
フリージャーナリストの立ち位置で番組に関わるビートTけしはこの日、「コンカツ特集」のVTRを観て、スタジオで思わずこう言い放った。
「なんだコレー、みんな結婚したいって言っている割には、愛とか恋とか、ひと言も出てこないじゃネエの。めちゃくちゃだな」
番組のVTRでは、インターネット上に理想の結婚相手(男性)の年収や身長を入力して″送信ボタン″をポチッと押すOLや、「早く結婚しないと子どもが産めなくなる」と焦って婚活するアラフォー女性らが、次々と映し出された。
Tけし同様、違和感を覚えた人も多いに違いない。
だがこれが、婚活の現状だ。
まず出産のタイムリミットが迫るアラフォーにとって、熱愛や大恋愛は二の次、三の次。
彼女たちは言う。
「大恋愛を待って、もたもたしている時間はない。あと1年が勝負なんです!」 一方、20代の若い男女はといえば『Yahoo! 縁結び』や『エキサイト恋愛結婚』などの、ネット婚活に熱心だ。
彼らは言う。
「リアル(現実)で恋人を探すより、バーチャルのほうが効率いいじゃないですか」彼らを「夢がない」と頭ごなしに否定するのはたやすい。
だが現実には、大恋愛に憧れるあまり、結婚しそびれる男女が世にあふれている。
だったら、「運命の出会いは待っていても訪れない」「恋愛は結婚してから育めばいい」と割り切って省力で臨む″エコ恋愛″のほうが、結婚・出産に至りやすいのではないか…?それを確信したのは先日、独身男性のAさん(40歳)に出会ったとき。
いまだバブルの恋愛神話に捉われている彼は、肩を落とすと力ない声でこう言った。
「友達に『お前は将来、結婚はできても恋愛はできないな』つて言われたんです」Aさんは、大企業に勤めるビジネスマン。
見た目は地味だが、洋服のセンスは決して悪くない。
ただ、女性と相対すると緊張してしまう。
ゆえに交際経験はまだない。
だから言われるそうだ。
「お前は条件はいいから、もし見合いすれば結婚はできる。でも″恋愛力″はないから、恋愛結婚は絶対にムリだろう」と。
失礼ながら、私にもそう思えた。
生真面目な彼が、大恋愛の末に結婚に至る姿は想像できない。
Aさんにとっても、それが大きなコンプレックスなのだろう。
でも、見合いのどこが悪いのか?そもそも「結婚は、大恋愛の延長にあるべき」と決めたのは誰だったのか?その恋愛万能主義こそが、未婚率の拡大を招いたのではないか? 考えてみれば、恋愛結婚と見合い結婚の比率が逆転したのは、1970年前後。それまでは圧倒的多数が「見合い結婚」だった。
また70年代の恋愛も、出会いのきっかけは親戚など第三者による紹介や、会社の中での″作られた出会い″など、いま考える恋愛結婚とはニュアンスが違った。
Y田教授の著書にもあるとおりだ。
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